インドネシアの調査では、セクター・プログラム・ローンの見返り資金によって事業を実施したジョグジャカルタ特別州のバントゥール県を訪れ、現地調査を行った。ジョグジャカルタ州はジャワ島の中部に位置し、王宮やボロブドゥール、プランバナンなどの世界遺産で有名な観光地である。バントゥール県はジョグジャカルタ州の州都ジョグジャカルタ市の南約10キロに位置し、観光が主要な産業となっている(図1参照)。
事業名 | 予算 | 事業内容 |
郡市場の改修 | 281万円(2億2000万ルピア) | 郡が運営するマーケット(住民が食料や衣料などを売買する場)の改修を行った |
小学校校舎立替 | 250万円(1億9500万ルピア) | 老朽化した木造校舎を2階建校舎に建て替えた |
排水整備 | 235万円(1億8400万ルピア) | 全長450メートルの排水路の整備を行った |
生活道路整備 | 162万円(1億2700万ルピア) | 全長1763メートルの村道の舗装を行った |
県道改修 | 665万円(5億2000万ルピア) | 全長3キロメートルの県道の再舗装を行った |
州道改修 | 2840万円(22億1900万ルピア) | 全長13キロメートルの州道の拡幅と舗装を行った |
現地調査では、表1の事業の現地踏査を行うとともに、各事業によってプラス・マイナスの影響を受けた周辺住民、NGO、中央政府と県の役人をメンバーにステークホルダー会議を開催した。写真1はステークホルダー会議の様子である。
ステークホルダーミーティングでは、地方政府の役人から、セクター・プログラム・ローンの見返り資金は、1.経済危機のために失業した労働者の雇用を確保した、2. 整備されたインフラを利用することによって利便性が向上した、3. インフラを利用した経済活動が活発化した、などの効果が発表された。
住民からは、具体的な事業の効果が発表された。例えば、 ・小学校校舎の立替事業では、2階建の新たな校舎を建設することによって、これまで3部制で行われていた授業が2部制になり、児童がより長い時間学校で勉強できるようになった。 ・郡の市場の改修では、これまで雨ざらしであった場所の屋根の設置や、地面のコンクリート舗装に伴って衛生状態が改善された。また、同じくセクター・プログラム・ローンの見返り資金で実施されたバントゥール県の中心部から海岸に走る州道を改修したことによって、バントゥール県の住民や海岸に余暇にきた人々が市場で買い物をする機会が増したこと、生鮮野菜や魚介類を輸送する時間が減少したことにより、市場で販売される野菜や魚の価格が上がり、農家や漁師の所得が増加したなど、プラスの効果が発表された。 また、事業の実施には地域住民が参加し、住民の意思を反映した事業が行われたことも発表された。例えば、小学校校舎の立替の際には、PTAや教師が校庭の整備を行った。また、生活道路整備では、住民が排水路整備のための土地や資金を提供するとともに、道路整備を行った労働者に対して昼食を提供した。また道路の舗装は、雨水ができるだけ地面に染み込むようにと住民の配慮から、コンクリートブロックを並べた舗装とした。 |
![]() 写真1 ステークホルダー会議で発言をする住民代表
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